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2023.6.30

疲れたら、潮風にあたる。アロハシャツブランド・Eanbeのオーナーに聞く、“いいあんべぇ”のつくりかた

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沖縄弁で気分がいい時に用いる、「いいあんべぇ」。『いいあんべぇを日常に』を掲げる地元発のアロハシャツブランドがある。「Eanbe(イアンベ)」だ。野球・バーバー・温泉など独創的で遊び心溢れるモチーフを取り込んだデザインで、人気を集めている。

このユニークなブランドのオーナーを務めているのが沖縄県出身の下地希一(しもじ きいち)さん。「アロハシャツを通して“いいあんべぇ”のコンセプトをもっと多くの人に伝えたいんです」と語る彼は、まさに「チル」を掲げる本サイトに登場してもらう人物としてうってつけだ。

今回は下地さんがチルタイムを過ごす場所として挙げてくれた湘南の海で、「チル」と“いいあんべぇ”の共通点、またその背景にある沖縄との親和性について、話を聞いた。

下地希一 (しもじ きいち)
1994年生まれ。沖縄県浦添市出身。アロハ好きが高じて2019年に「Eanbe」を立ち上げ。「アロハおじさん」の愛称で親しまれ、お酒とサウナとギャンブルをこよなく愛する。世界一のアロハシャツブランドを目指し、東京と沖縄を拠点に奮闘中。


疲れた時こそ、海を求めてしまう

――:下地さんが運営しているアロハシャツブランド「Eanbe」は、その名前からして「チル」と親和性が高いように思えます。

下地:そうですね。このブランド名は沖縄の方言で、気分がいい時に使う“いいあんべぇ”からとっています。例えばサウナに行ってととのう、音楽を聴いてだらだらするなどの「チル」的な行動って、“いいあんべぇ”の中でも「動」か「静」で言えば「静」に近い気がしていて。逆に麻雀とかスポーツに打ち込んだり、パチンコとかギャンブルでハイになって“いいあんべぇ”は「動」。

――:面白い定義ですね。そんな下地さんにとっての「チル」な過ごし方として挙げていただいたのは「湘南の海でたそがれること」。具体的にどんなシーンでこの場所に来ますか?

下地:年度末や正月くらいに休みを取ると、心が無になれる場所に行きたくなるんです。そうなるとやっぱり沖縄出身なんで、海を求めてしまう。こうやって湘南に来て、ダラダラしながら一泊過ごすのが好きですね。日常業務に追われている生活を一旦リセットする機会が、自分にとってのチル的な行為です。

――:「求めてしまう」。下地さんにとっての海ってどういう場所ですか?

下地:常に身近な存在。沖縄の実家からすぐ行ける距離に海があったので、小さいころからの遊び場でした。高校を卒業してからずっと東京にいますが、今でもふとした時に行きたくなるんです。

――:東京にいるとなかなかビーチにはいけないですもんね。この湘南の海ではどのように過ごしていますか?

下地:基本的には友達2〜3人と、なんにも決めずに行きます。お店でサンドイッチをテイクアウトして、ビール買って、テトラポットに座ってただボーッとしている。ホテルもその場で予約します。海に入らずとも、眺めているだけでいい気持ちになれるんです。

――:地元沖縄の海の、代替的な役割を求めているような?

下地:最初はそうだったかもしれません。でも湘南にはリフレッシュする目的で来ているので、今では沖縄よりも「無」になれる感じがしますね。沖縄の海は生まれた時からそこにあったものなので。

――:では沖縄でのチルタイムとなると、また答えは変わってくるんですかね?

下地:沖縄ではどうしてるだろう……やばい、酒しか飲んでない(笑)。でも海よりも馴染みの店に行ったり、友達の家で飲むことが多いかもしれないです。

――:現在は東京在住のようですが、沖縄にはどれくらいの頻度で帰っているんですか?

下地:基本的には沖縄での仕事に合わせて帰ることが多いですけど、予定が決まるとその前後も押さえて2週間くらい行っちゃう(笑)。なので今は1ヶ月のうち、沖縄と東京でほぼ半々くらい過ごしていますね。

まずは自分を“いいあんベぇ”に。

――:理想的なライフスタイルですね、羨ましい……。

下地:でもこんなに自由に動けるようになったのは、去年からです。それまでは気持ちに余裕がなくて、休んでいい日にもずっと仕事しているようなストイックな生活でした。でも、忙しくなるためにブランドをやっているわけじゃないし、なにより自分が“いいあんべぇ”でいないと本末転倒じゃん!と思ってからは、外に出て遊んだり、チル的なことをする時間を増やすようになりました。

――:目の前に積み上がる仕事をこなしていると、つい視野狭窄になる気持ちはすごくわかります……。自分が“いいあんべぇ”でいることに立ち戻れたのは、なにかきっかけがあったんですか?

下地:2018年に「Eanbe」を立ち上げた当初は、作りたかったデザインをどんどん世に出せていたんです。でも、忙しくなってから徐々に企画が思い浮かばなくなってきて。なんでだろうと思った時に、今までは頭の中にあったアイデアのストックを使ってきただけであって、新たにインプットしないといけないことに気づきました。新しいデザインを生み出すためにも自分がまず遊んでいないと、って思ったんです。

――:確かに「Enabe」のアロハシャツは、麻雀や温泉など楽しい娯楽をテーマにしたデザインが多いですよね。

下地:そうなんです。ずっと事務所にこもって考えているだけではいいアイデアが生まれなくて。だから今年に入ってからは意識的に友達と遊んだり、人と会ったりするようにしていて、それが仕事にも繋がっています。

この日、下地さんが着てきたのはEanbeの「JOURNEY」。ダイビングやプールなどのアクティビティがあしらわれている。コロナ禍で旅に出られなかったフラストレーションから着想を得たんだそう

――:この東京と沖縄を行き来するライフスタイルは今後変わっていくのでしょうか?

下地:今、沖縄に事務所と店舗を構えようとしているんです。でも東京の事務所は残すし、これからも沖縄と東京の2拠点でやっていきたいなと。沖縄でしか事業をやらないということではなく、沖縄から全国、世界に出ていきたい。沖縄発のブランドとしてもっと展開していくための戦略ですね。

だから今年から“いいあんべぇ”をテーマにしたものだけではなく、沖縄の「文化・自然・心」をアロハで表現するシリーズ「RYUKYU COLLECTION」というのを始めて、ちゃんと商品からも沖縄のよさを伝えていこうとしています。

沖縄には、人を引き寄せ合う磁場がある

――:そもそも、「沖縄発」と地元を掲げていることにはどんな思いがあるのでしょうか?

下地:難しい質問です……島国根性なんですかね。東京に来て7~8年ほど経ちますが、沖縄からは簡単に離れられない。今でも「『沖縄魂』でやってやる!」という感覚があります。沖縄発のブランドでも全国に売れるんだという実績を作って、次の世代からも何か行動を起こす人が出てきてほしいし、沖縄のことが好きな人を増やしてもっと盛り上げたいという思いはあります。

――:確かに沖縄出身の方は、地元への帰属意識を感じることが多いです。

下地:東京で沖縄出身の人に出会うと、知り合いじゃなくても一瞬で仲良くなれるし、お酒をおごってもらえます。県民性として地元愛は強いですね。

――:先ほどビーチで撮影をしていた時にも仰っていましたよね。東京で知りあった人たちにアテンドをお願いされて、一日過ごしたら一気に深い関係になれたと。

下地:なぜかはわからないですが、沖縄だとこれまで心を閉ざしていた人ともついつい深い話になって仲良くなれることが多いですね。沖縄は人を開放的にするのかもしれないです。旅行から帰ってきて、東京や別の場所で会っても「あの時の沖縄最高でしたね~」と、ずっと仲良いままなんですよ。

――:すごい。人を引き寄せ合う磁場みたいなものが沖縄にはあるんですかね。下地さん自身は沖縄のどんな魅力を伝えたいと考えていますか?

下地:“いいあんべぇ”にも表れていますが、沖縄特有のゆるさが好きで。ずっとチル状態みたいな、自然体で生きる人が沖縄にはたくさんいます。それはルーズであることと紙一重でもあるんですが(笑)、ずっと切羽詰まって生きている人たちに対して「たまにはこうして過ごすのもありですよ」とブランドを通して沖縄を知ってもらえたら嬉しいです。

――:ちなみに色んな分野で沖縄出身の方が活躍されていますが、刺激を受ける人はいますか?

下地:最近はヒップホップシーンでも沖縄のアーティストが活躍しているところを目にすることが増えてきて、いい刺激を受けていますね。

――:特にAwich、唾奇(つばき)、CHICO CARLITO、OZworldなどの活躍は近年目覚ましいです。

下地:そうなんですよ。中でもラッパーの柊人(シューツ)は高校の同級生なんです。彼が今ほど注目されていない時に出した『好きなこと』(2021年)という曲に、「いつか好きなことだけで稼げたら 今までの全てだってきっと無駄じゃないだろ」ってリリックがあって。自分もちょうど必死にこのブランドのことをやっていた時期だったので、かなり響きましたね。

――:最後に下地さんが「Eanbe」を通して成し遂げたいことってなんですか?

下地:まずは沖縄で店舗を出すこと。来年はアメリカでポップアップイベントをする予定もあるので、そこから海外にも展開したいですね。でもアロハシャツを売るというのはあくまで手段であって、商品を通して「Eanbe」のコンセプトを伝えるのが重要だと思っています。だから将来的には、服を扱うだけではなくて居酒屋もやりたいと思っているんですよね。気軽に飲みに来てダラダラして、心置きなく「チル」できる場所。いろんな人と一緒に“いいあんべぇ”になれる機会を作るのが目標です。

執筆・取材:峯大貴
撮影:持田薫
編集:三浦玲央奈

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