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2022.10.3

【境界を“溶かす”】こわくもあやしくもないシーシャ入門!

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シーシャ(水タバコ)。様々なフレーバーのついたタバコ葉を炭で熱し、出た煙を水パイプに通して吸うことで楽しむ、中近東発祥の嗜好品だ。近年静かなブームとなっており、シーシャを吸う行為そのものを「チルする」と言うことも。そんな日本におけるシーシャの受け入れられ方やチルとの関係性を探るために訪れたのは、水道橋にあるシーシャカフェ&バー〈いわしくらぶ〉東京支店。快く迎え入れてくれた店主の磯川大地さんに、シーシャの魅力に気づいた時のエピソードから話を聞いていった。

■プロフィール

磯川大地

1988年北海道うまれ。Northcamp inc. 代表。高校中退後、書店「読書のすすめ」での丁稚奉公を経て、2012年シーシャカフェいわしくらぶを創業。その後、いわしくらぶ東京支店、いわしくらぶ富山分店を出店。シーシャの体験を深めていくうちに禅や茶道と出会い、2020年『Art Collective Ochill』を創設。吸うお茶の研究、体験づくりを行う。

シーシャが東京を教えてくれた

「出身は北海道なんですけど、早く商売がしたくて高校を中退して上京するんです。2年間、江戸川区の本屋さんで丁稚奉公しながら商いの勉強をさせてもらいました。その後、北海道に戻って先輩と映像制作会社を始めるんですが、時々、仕事で東京に来ていて。ただ当時、東京って街が苦手だったんですよ。中卒で学歴もない自分にとっては、東京にいる人がみんなスノッブに見えて怖かった」

「そんなある日、友達に下北沢の〈shisha 1〉というカフェに連れて行ってもらって。初めてシーシャを吸ったんです。そこはすごく狭くて、満席の電車みたいにぎゅうぎゅうなんですよ。必然的に、隣の人と話すことになる。ぼくが気後れしちゃうような、オシャレな人もいかつい人も、話せばみんないい人で(笑)。その時、東京は怖くないと気づきました。人と人との垣根を溶かしてくれたこと、それが自分にとってのシーシャ原体験です」

当時の〈shisha 1〉に集っていたのは大学生や、起業家、DJ、海外からの旅行者など多種多様な人たちで、自然と近況報告・人生相談が始まる感じが心地よかったそうだ。味や、吸った時の心地よさといったシーシャそのものだけではなく、自然に人と交流できる空間の仕組みに魅力を見出した磯川さんの感性が興味深い。

「ドリンクやご飯って、その場で出会った人となかなかシェアしにくいじゃないですか。でも煙ってそんなに量が減る感覚はないし、シーシャってそれぞれが自身のマウスピースを付けて吸うから『こっちのフレーバー、吸ってみますか?』って言いやすいんですよね」

非日常から、日常へ

磯川さんがシーシャに出会った2000年代後半。当時シーシャを提供している店は〈shisha 1〉など数えるほどだったそうだ。しかしここ数年、「チル」という言葉が一般化していくのとも近しいペースで、シーシャカフェやバーを街で目にする機会が増えたように思う。

「要因はいくつもあると思いますが、若い人を中心にしたお酒・タバコ離れは大きいかもしれませんね。シーシャのお店でもお酒を飲む方はいますが、別に飲まなくても朝までいていい。またシーシャにもニコチンは含まれていますが、1本を2時間くらい楽しんで紙タバコ1〜2本分ほどと言われているんです。一日が終わった後や仕事の合間のリラックスタイムは誰しも必要としている中で、強い酩酊感のあるお酒や、中毒性の高いタバコとも違う、ちょうどいい嗜好品という感じで広まったのかも」

以前のシーシャはオリエンタルなデザインや、モクモクと煙が立ち込める店内など、アンダーグラウンドなイメージもあっただろう。しかしここ〈いわしくらぶ〉は風通しがよく、どんな人にも開かれているような身近さを感じる。シーシャを取り巻く環境も変わりつつあるのだろうか。

「〈shisha 1〉とかの老舗を第1世代としたら、その後に出てきた〈チルイン〉や〈NORTH VILLAGE〉みたいなチェーン店は第2世代。中近東やアングラっぽい世界観がありますね。僕たちはその後に続く第3世代で、ここくらいから日常の中にシーシャを溶け込ませるようなお店が出てきました。特にこの5年は明るくておしゃれな店がどんどん生まれている。もともと非日常な体験が売りだったシーシャだけど、広まるにつれ色んなニーズが出てきたんでしょうね。静かな場所で、太陽光を浴びながら、パソコンを広げて仕事をしながら……。シーシャを吸うシーンが多様化しています」

「打ち合わせにも使えます」

仕事終わりのチルタイムとして楽しむことはもちろん、夜にちょっと残った仕事をこなす時のお供や、日中の気晴らしにもピッタリ。ノマドやリモートワークなど、仕事とプライベートの境界が溶けてきた現代のライフスタイルにフィットしたことも、シーシャが広がった要因と言えるだろう。

こうして磯川さんにお話を伺っている内に夜も更けていき、いつの間にか〈いわしくらぶ〉はお客さんで賑わっていた。一人YouTubeを観たり、パソコン作業していたり、何人かで談笑しているなど、それぞれの時間を過ごしている。そこで居合わせた常連さん4人にも、どのようにシーシャを楽しんでいるのか少し聴いて回った。

きしのさん(24歳 / シーシャカフェオーナー):シーシャカフェが増えてきて、特に東京は進んでいますね。(磯川)大地さんが去年新しく始めた下北沢〈chotto〉なんておしゃれな商業施設に入っているし、シーシャ初体験って人も入りやすい。ものすごく開放的でびっくりしました。

かずよさん(31歳 / ボイストレーナー):色んなところがあるから、ほぼ毎日どこかの店でシーシャを吸っています。仕事終わりにボーっとしたいから職場近くのお店に一人で行ったり。逆に〈いわしくらぶ〉はホーム感があってみんなと会うために行く。あと仕事相手との打合せ場所としてもすごくよくて。まったり喋れるし、Wi-Fiもコンセントもあって便利。

とむさん(31歳 / 経営者):シーシャ屋は、気持ちがほどけますよね。込み入った話も気軽にできる気がする。

としさん(33歳 / 外資メーカー勤務):カフェとは違って面と向かって座るような作りのお店があんまりない。横に並んで座って同じ景色眺めながら、たまにシェアしたりして。ビジネスライクにならないのがいいんですよ。

かずよさん:あと(磯川)大地がお店にいるときはくる(笑)。作ってくれる店員さんによってかなり味が変わるんですよ。

としさん:なんか美容院と似ている気がする。自分と店員さんのセンスが合うかがけっこう重要で、何回か通いながら自分の好みを理解してもらったり、合う人を見つけていく感じ。

とむさん:わかる! フレーバーの種類も多いし配合出来るから、なかなか決められなくて「スイスっぽい感じ!」みたいなオーダーで作ってもらうこともあります(笑)。それで気に入ったら何を使っているのかを聞いて、好きな味を知っていくのも楽しい。

それぞれのライフスタイルにフィットする形で、シーシャとよい付き合い方をしているようだ。とむさんに話していただいた美容院に似ているという見立てはなんともユニークだが、その日の気分に合わせて店員さんに作ってもらえるところは、バーテンダーが作るオリジナルカクテルとも近しいのかもしれない。

気が付いたら、深呼吸している。

また磯川さんは〈いわしくらぶ〉の運営だけでなく、アートコレクティブ〈Ochill〉を2020年に創設。彼らは京都を拠点に、日本らしい well-being を “well-down” と再解釈し、集団的創造と探究している。この“well-down”という言葉を「社会的に欠けていても、精神的に負荷がなく、自然体である自分に満たされていく状態」としているが、そこに行きついた背景も含め、より詳しく伺った。

「ある常連さんが『シーシャは気が付いたら深呼吸しているからいいね』と言ったことにハッとして。そこから着想を得たのが〈Ochill〉です。“well-being”という言葉がよく使われていますが、ヨガやメディテーションに代表されるそれらの行為って、能動的に取り組むことで癒しや安らぎが得られるものが多いですよね。でももっと自然体で、日常の延長線上で心が満たされることってあると思う。人によっては絵を描いて自分の世界に没入したり、運動している間にふと瞑想していたり。お酒や喫煙も、有害な行為ではなく嗜好品として人を癒してきたと思う。そんな時間について考えていく内に“well-down”という解釈に行きつきました」

「この〈Ochill〉の活動のひとつとして、タバコ葉ではなくお茶の葉っぱを使用した日本発のシーシャフレーバーを開発するためのプロジェクト『TEASHA(ティーシャ)』に取り組んでいるのですが、お茶だけでなく日本古来の素材を使ったフレーバーも計画しています。例えば柑橘類の一種“タチバナ”。古代に不老不死の薬として知られていたくらい栄養価や香りが高いらしく、試行錯誤のしがいがある素材です。色んな角度から日本に眠るチルを探っていけたらなと」

シーシャの新しい可能性を模索し続ける磯川さん。その根っことして、社会に何をもたらしたいと考えているのだろうか。ちょっと仰々しい質問だが最後に聞いてみた。

「シーシャは煙。だからどこでも入っていけるんですよね。何かと何かの間にあるものをシームレスに溶かす、媒介になれるものだと思っていて。僕らのつくるシーシャやプロダクトが今後広まって、日本の素材やひいては思想が海外に伝わるきっかけになったらいいですね。自分は香りを通して文化を伝えて、色んな境界を溶かしたいと考えているのかもしれません」

取材・執筆:峯大貴

撮影:小池大介

編集:今井雄紀(株式会社ツドイ)

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